第275話

不意に引かれ、私はバランスを崩した。体が横に傾き、沈み始める。

だが、どこまでも落ちていくのではなく、私は広い胸に受け止められた。

まばたきをし、混乱したまま、私を抱きかかえている男を見上げる。彼の顔はスキューバマスクで隠されていた。

イラっとして彼を睨みつけ、身をよじって逃れようと試みる。手を上げて、降ろしてほしいと合図した。

アシュトンは従うどころか、私の肩を押さえつけ、それ以上動けないようにすると、私よりも速い手話でこう伝えてきた。『何かがおかしい。動くな』

声はなくとも、彼の警告の重みが伝わってくる。

私は凍りついた。冗談ではない。

私は手話で返した。『何なの?』

彼...

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