第277話

さっきまで体の芯まで冷え切っていたというのに、手のひらがじっとりと汗ばんできた。苛立ちが、波のように次から次へと押し寄せてくる。

彼は黙っているけれど、頭の中では明らかに何かを考えている。彼も同じことを考えているのだろうか。私のせいでこんなところに足止めされた、と。私についてきたことを後悔しているのだろうか。

でも、私は彼に来てほしいなんて頼んでいない。どうして彼が私を責めることができるの? 責任のなすりつけ合いをするなら、私の穏やかなクルーズを台無しにしたのは彼の方じゃないか。私の目の前で新しい恋人を見せびらかしたのも彼だ。

感情がどんどんねじれて、理性を締め付けていく。

私は彼の手から枝の...

ログインして続きを読む