第284話

彼の右手は激しく震えていた。まだダイビング用のグローブに覆われている。

以前、なぜいつもそれを着けているのかと尋ねたことがあった。作業がしやすくなるからだ、と彼は言った。もっともらしい理由に思えたので、それ以上は聞かなかった。

だが、今は……。

私は息を呑み、彼の手袋に覆われた手に手を伸ばした。彼は意識がなく、抵抗することもできない。私はやすやすとグローブを剝がした。それが外れた瞬間、私は悲鳴を上げそうになるのを、手で口を覆って堪えた。

彼の右手。

手のひらは、生々しい、癒えていない裂傷でぱっくりと割れていた。手全体が腫れ上がり、赤黒く、感染症に蝕まれている。かろうじて手だとわかる程度だった。...

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