第298話

深い水の底から自身を引きずり上げるように、俺はゆっくりと暗闇から浮上した。体は重く、頭は分厚い靄に覆われているようで、しばらくの間、自分が目を覚ましているのか、それともまだ熱の霧の中を彷徨っているのかさえ分からなかった。ぼやけた形が視界に出たり入ったりし、鈍い光が霞を切り裂いていた。

そのとき、彼女が見えた。

ミラだった。ベッド脇の椅子に座り、手に顎を乗せ、まるで俺が目を開けるのを念じるかのように、じっとこちらを見つめていた。

また夢を見ているのだと思った。意識が朦朧とする中で彼女の顔を幻視するなど、これまでにもあったことだ。

「ミラ……?」声はしゃがれていて、ほとんど囁きに近かった。

彼女は...

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