第307話

「疲れてる?」と私は訊いた。

彼はイエスともノーともとれるような声を漏らした。

「奥さんとセックスするには疲れすぎてるってこと?」と私はからかった。

「したいのか?」彼は急に寝返りを打ち、私の上に覆いかぶさってきた。その目はまっすぐに私を捉えている。

「どうしてしたくないなんて思うの?」

「でも、休憩が必要だって言ってたじゃないか」

「私がいつそんなこと言ったかしら?」私はとぼけてみせた。

「今朝だ。九時十五分。お前が俺をベッドから蹴り出した時」

「正確な時間まで覚えてるの? なによ、メモでも取ってたわけ?」

「ふむ」彼は簡単にははぐらかされない。「で、どうなんだ? イエスかノーか」

「もしノ...

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