第348話

「あいつらは陽動で誘拐犯たちの気を引いている。その隙に君を連れ出したんだ」

再び吐き気の波が襲ってきた。乾いて、身をよじるような感覚だ。

リースは急いでグラスに水を注ぎ、私に手渡した。「ほら、これを少し飲んで。食べ物はなんとかするから」

「本当に、気にしないで。もし誰かが私たちを探しているなら、そんなリスクを冒す価値はないわ。私は大丈夫。食べることより、生き延びることの方が大事よ」

私は一口、小さく水を飲んだ。水が少しだけ胃を温めてくれたので、もう少し飲んでみる。しかし数口飲んだところで、体が拒絶反応を示した。激しく、すべてを吐き戻してしまった。

何時間も何も食べていなかったから、胃の...

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