第370話

ゆっくりと意識が浮上し、瞬きしながら目を開けた。

「気分はどうだ?」静寂を切り裂く声に、私はびくっと飛び上がった。

アシュトンだとわかって、慌てて起き上がろうとする。だが、急に動きすぎたせいで、ズキン、と突き刺すような痛みが頭を走った。

アシュトンが一歩前に出る。「横になっていろ」

痛みが過ぎ去るのを待って、私は尋ねた。「どうしてここに? ここはどこ?」

意識を失う前の出来事が洪水のように蘇り、私は息を呑んだ。「ダニエルは?」

「気づくのにずいぶんかかったな」アシュトンの口調は非難めいていた。「あの男とは縁を切ったと思っていた。なぜ会いに行ったんだ?」

私はバツが悪くなった。「えっと、誘拐事件...

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