第97話

目が覚めると、顔が温かくて硬い何かに押し付けられていた。

それが肌だと気づくのに、一瞬かかった。

男の人の肌。日焼けして、滑らかで、少しだけしょっぱい。規則的で、催眠術にかかりそうなリズムで上下している。

私の指は、誰かの腹筋に食い込んでいた。

しかも、柔らかい腹筋じゃない。

部屋は薄暗かった――灰色の早朝のような薄暗さだ――けれど、私がコアラみたいにアシュトンにしがみついていて、彼が上半身裸だという事実に気づけないほどではなかった。

強くまばたきをする。一瞬、もう一瞬、じっと動かずに、まだ鈍い頭が起動するのを待った。

昨夜のことは、ぼんやりとしか思い出せない。熱があったこと、点滴、氷嚢。アシ...

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