第9章

美咲視点

そこにいたのは健さんだった。私が必要な訴訟資料のコピーを届けに来てくれたのだ。

翔太は健さんを見ると、警戒心を露わにした。私のことは応援してくれてはいるが、私たちの生活に新しい男性が入ってくる可能性については、明らかに慎重なままだった。

三人でリビングに座っていると、翔太が不意に口を開いた。「明日、母さんの大事な審理があるんだ。知ってる?」

健さんは頷いた。「ええ、存じています。そのための資料をいくつかお持ちしたところです」

「もし父さんが勝ったら、母さんは僕も含めて、たくさんのものを失うことになる」翔太は健さんの目をまっすぐに見つめた。「母さんのそばにいてくれ...

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