第9章
美咲視点
そこにいたのは健さんだった。私が必要な訴訟資料のコピーを届けに来てくれたのだ。
翔太は健さんを見ると、警戒心を露わにした。私のことは応援してくれてはいるが、私たちの生活に新しい男性が入ってくる可能性については、明らかに慎重なままだった。
三人でリビングに座っていると、翔太が不意に口を開いた。「明日、母さんの大事な審理があるんだ。知ってる?」
健さんは頷いた。「ええ、存じています。そのための資料をいくつかお持ちしたところです」
「もし父さんが勝ったら、母さんは僕も含めて、たくさんのものを失うことになる」翔太は健さんの目をまっすぐに見つめた。「母さんのそばにいてくれ...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章

5. 第5章

6. 第6章

7. 第7章

8. 第8章

9. 第9章


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