第20章

山田警部は以前、佐藤安奈の家で目にした惨状を思い出した。自ら出動しなければ、佐藤健一の言い分を真に受けるところだった。まさに「盗人猛々しい」とはこのことだ。実の妹の家をめちゃくちゃに壊しておいて、それを些細なことだと思うなんて。やはり兄妹関係は幼い頃からの積み重ねなのだろう。

佐藤健一が立ち去ると、佐藤安奈は涙をぽろぽろと流しながら、すすり泣きつつ話し始めた。

「学校で英語スピーチコンテストの募集があって、私が枠を取れたんです。でも両親と兄たちは、その枠を姉に譲れって。私が断ったら、松郎兄さんが今住んでるところを壊してしまって...」

家族愛を盾に取るつもりなら、佐藤安奈も同じカードで...

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