第23章

タピオカ店の忙しい時間帯だったが、二時間はあっという間に過ぎ去った。ミルクの香り漂う店内での仕事は楽しく、毎日良い香りが身に染み付くのも悪くなかった。

片付けを終えた安奈は、雲さんに向かって言った。

「山田さん、午後は授業があるので、今夜は来られないと思います」

山田雲は微笑みながら頷いた。

「構わないわよ。自分の用事を済ませなさい。若い子には若い子の生活があるもの」

タピオカ店を出たところで、安奈は見覚えのある後ろ姿が自分の電動自転車に座っているのを見かけた。従姉の晴美だった。

その姿を見て、安奈は一瞬固まった。

「晴美姉さん?」

誠には三人の兄弟がいて、誠が長男で、弟が二...

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