第29章

「口座番号を教えてください。診察料を振り込みますので」早坂晋也の声が電話越しに聞こえてきた。

先ほど警察署で早坂晋也が助けてくれたことだけでも十分ありがたいのに、まさか診察料までもらうなんて申し訳ない。

でも、ポケットに残るわずかなお金を触りながら、佐藤安奈は涙を流した。本当に貧乏なのだ。

心の中で迷った末、受け取ることにした。

「私の口座番号は...」佐藤安奈は呟きかけたが、キャッシュカードを持っていないことに気付いた。

「キャッシュカードを持っていないので、作りに行きます」そう言って、このチャンスを逃さないよう急いで解決しようと決意した。

電話の向こうから、早坂晋也の声が響い...

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