第31章

「いやいや、早坂兄さんが自分の人とは言えないでしょう?スポンサーであり、患者さんなのですから」

医者として、患者のプライバシーを守らなければならない。おばあちゃんが言っていた通り、それは医者としての責務だ。今生は真摯に医者として生きていくつもりだ。もう徐子勤一人だけを診る医者ではない。だから、患者を守るためにそう考えているのだ。

祖母は玄関で静かに聞き耳を立てていたが、勉強の声は聞こえてこなかった。佐藤安奈が本当に勉強しているのか確信が持てなかった。

キッチンの物を見て、何かを思い出したように、笑顔で整理を始めた……

これらは全て良い物ばかりだ!

佐藤安奈は分かっていた。祖母は自分...

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