第38章

早坂晋也の満足げな返事を聞いた佐藤安奈は、まばたきをすると、突然ぱっと立ち上がった。彼女はバッグから一本の薬を取り出し、注意深く手に持ちながら、目には少しの焦りと心配の色が浮かんでいた。

「あ、忘れるところでした。早坂兄さんのお薬、もうすぐなくなりますよね。これが次の分です」佐藤安奈はそう言いながら、薬の瓶を早坂晋也に手渡した。その声には彼への心からの気遣いが滲んでいた。

「しっかり飲み続けないと効果が出ませんよ」

佐藤安奈の動きは優しく繊細で、その瞳には温かい光が宿っていた。この瞬間、彼女の心には一つの願いしかなかった。それは早坂晋也が一日も早く回復し、再び陽の光の下で、彼自...

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