第40章

樋口さんのこの言葉は早坂長治の気に入るところだった。

老人は密かに彼に向かって親指を立て、励ましの意を示した。

「安奈さんは若様の診察をしてくださったお医者さんで、体調の回復も彼女のおかげなんです」樋口さんは佐藤安奈の立場をさらに格上げして説明した。

早坂長治の目が輝いた。

「お医者さん?それはもっといいじゃないか、晋也にぴったりだ」

樋口さんは言葉に詰まった。お爺様は本当に焦っているらしく、当人を見もせず、状況も確認せずに決めてしまうつもりのようだ。

とはいえ、お爺様のこのような反応も無理はない。これまで若様の周りに女性が現れたことはなく、家に入れたのは...鈴木...

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