第5章

樋口おじが口角を引き攣らせ、咳を押し殺しながら、もう一方のドアを開けて、早坂晋也様を慎重に支え起こした。

終えると、樋口おじは胸が痛んだ。外見は国をも凌ぐほどの貴族のような若旦那だが、その苦悩を誰が知ろう。

幼くして母を失い、父親には愛人がいるばかりか、家産を狙う私生子までいる。

大病を患って以来、体調は優れず、悪夢に悩まされ、安眠できる日が一日もない。

不眠は頭痛を伴い、薬に頼らなければ苦痛を和らげることすらできない。

近年、薬への耐性が強まり、医師の処方した薬も効かなくなってきた。時には、若旦那は一時間の睡眠すら得られない。

あれほど健康そうな人が、一日一時間も眠れないとは、...

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