ハイパーアウェア

エマーソン視点

ドラムスティックを置いたときにはもう遅い時間だった。今日、本当に演奏したのと変わらないくらいに。

もっとも、やったも同然だった。あれだけ練習したのだから。本番の後のように肩が痛む。演奏に没頭するときに俺を飲み込む、あの情熱からくる鈍い疼きだ。

他のメンバーは前にやったことのあるルーティンを選んだから、建前上は、何時間もリハーサルする必要はなかった。覚えるべき新しい繋ぎもないし、もしリズムが乱されても頭が真っ白になる可能性もなかった。だが俺は、『建前上は』なんて言葉を絶対に信用しない。

全てをさらい直して、音楽の全ての抑揚を自分に思い出させる必要があった。ステージに立って...

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