ライオンズ・デンII

アダム視点

キスは、優しくなんかない。まったく。不器用で、必死で、まるで罰を与えているかのようだ。あいつに腹を立てているはずなのに、その唇は慣れ親しんだ味で、柔らかくて、温かくて、甘くて……クソ、もうこれが恋しかったなんて。

最悪だ。俺は一歩近づき、あいつの頭を抱きかかえる。

その時、あいつが俺の唇に息を吐きかけた。あまりに柔らかなその音に、全身がこわばる。あいつの手が再び俺のシャツを探り当て、今度は引き留めるためではなく、もっと強く引き寄せるために。

やめるべきだ。

でも、やめない。

だけど、やめるべきなんだ。

「エム」俺は言いかける。少しだけ身を引いたが、まだ全然足りない。「...

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