第20章 高坂レモンがいなくなった

バシンッ、という衝撃に高坂檸檬の手のひらが痺れた!

彼女は愕然と篠崎千謙を見上げた。その姿が、一瞬でひどく大きく見えた。

まさか彼が自分の手を取り、琉生兄さんに自ら平手打ちを食らわせるとは思わなかったのだ。

場は、死んだように静まり返った。

相沢湘子は高坂琉生が殴られた瞬間、心の底で少しばかり痛快な気分を味わっていた。

これで、高坂琉生が高坂檸檬を許すことは金輪際ないだろう。

高坂琉生は目を血走らせ、信じられないといった口調で言った。「高坂檸檬! よくも俺を殴ったな?」

俺が怒って、二度と口を利かなくなってもいいというのか?

高坂檸檬はゆっくりと自分の手を引き戻した。正直、少し...

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