第101章

渕上純は思わず失笑し、上品な笑みを浮かべた。

「神原お婆さん、私はそんな善人じゃありませんよ。ただ、大事を小事に、小事を無事に済ませたいだけです。とことん追求するのも、こちらの器が小さいと思われそうですし……それに、眼中にない相手をわざわざ罰することに興味もありませんから」

実のところ、この発言は遠回しに風見紬を皮肉ったものだ。神原文清にそれが分からないはずがない。渕上純はそっと神原文清の顔色を窺ったが、相変わらず何を考えているのか読めなかった。彼はさっきからずっとその表情のままだ。

「ははは、本当に面白いお嬢さんだねえ。でも、お婆さんなんて他人行儀な呼び方はやめて、『おばあちゃん』と...

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