第117章

男は彼女を一瞥すると、不敵な面持ちで洗面所の扉を閉ざし、そのまま小林海と渕上純を外に締め出した。

怒りのあまり、渕上純は今の扉を蹴り破って神原文清に強烈な平手打ちを食らわせてやりたい衝動に駆られた。彼と一緒にいると、いつも決まって自分が恥をかくことになる。

「小林海、ごめんなさい。彼の言うことは気にしないで。彼はいつもああなの」

渕上純は申し訳なさそうに言ったが、実際には気まずさでいっぱいだった。

実のところ小林海は気にしてなどいなかった。彼は疲れを滲ませた笑みを浮かべる。

「何でもないよ。文清のことはよく分かってる。説明はいらない」

「私、お皿を洗ってくる」

渕上純は口実を探...

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