第120章

「適当なことを言っているわけじゃない。さっきの目つき、情愛が滲み出ていたぞ」

神原文清の声は冷ややかで硬質だったが、その口調はあくまで淡々としていた。

渕上純は顔をしかめ、冷たく言い放つ。

「毎日そんなことばかり考えているなんて、社長としてどうなんですか」

「褒め言葉として受け取っておく」

神原に取り合うのも億劫で、純は一刻も早く研修機関から離れたかった。周囲の視線が痛いほど突き刺さってくるからだ。完全に注目の的になっている——これは純が最も嫌う状況だった。

建物の外に出ると、純は自分でタクシーを拾って帰るつもりだった。しかし、神原はすぐに追いつき、路肩に停めてあったマイ...

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