第121章

小林海が渕上純を気遣う言葉を聞き、神原文清は胸糞が悪くなった。

彼は口の端を軽く歪める。これではまるで、自分が極悪非道な大悪党のようではないか。

一方、渕上純は傍らで奥歯を噛み締めていた。電話の相手が誰なのかは、とっくに察しがついている。十中八九、小林海だろう。

「俺は、お前の目にそんなふうに映ってるのか?」

神原文清の声には、微かな不悦が滲んでいた。

小林海は困ったように苦笑する。

「お前がそういう人間だとは思ってないよ。ただ、渕上さんに対してはずっとそんなやり方をしてきただろう?」

「もういい、切るぞ。運転中だ」

通話を終えると、神原文清は苛立ち紛れに携帯を放り出した。そ...

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