第69章

その時、屋外から一人の女が飛び込んできた。女は渕上純を激しく突き飛ばすと、すかさず神原文清の前に立ちはだかる。

「あんた今なんて言った? 誰を罵ってるわけ! 私のことか!」

風見紬は怒り心頭といった様子で、その表情は激情のあまりいささか醜く歪んでいた。

渕上純にとって、これが風見紬との初対面だった。想像していた姿とはまるで違う。ヒョウ柄のセットアップに、足元は穴あきのサンダル。紫色の巻き髪を肩に散らしたその風貌は、まるで街のチンピラのようだ。

本来、渕上純は神原文清が選ぶ「高嶺の花」なのだから、自分よりずっと美しい女性だろうと思っていた。少なくとも清純派だろうと。しかし目の前の現実は...

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