第74章

エレベーターを降りるや否や、男は彼女を抱きかかえたまま、廊下の突き当たりにあるプレジデンシャルスイートへと一直線に向かった。片手でパスワードを入力して扉を開け、神原文清は寝室へと足を踏み入れると、彼女をベッドの上に放り投げた。

渕上純はまるで芋虫のように、ベッドの上で不安げに身をよじった。その拍子に、身に纏った衣服が乱れ、はだけていく。

神原文清は息を呑んだ。ギリギリまで理性を保とうとしているのか、拳を固く握り締めている。だが、その漆黒の瞳の奥には、隠しきれない情欲の炎が揺らめいていた。

「渕上純、一度だけ聞くぞ。俺に抱かれたいか、それとも縛り上げてほしいか」

渕上純の呼吸は荒く、額...

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