第84章

さっきの出来事でまだ腹の虫が治まらない風見紬は、刺のある皮肉な口調で言った。

「文清、あの女に惹かれたあなたのこと、今はちっとも責めるつもりはないわ。だって渕上さんの手口、本当に見事だもの。人には人の、鬼には鬼の言葉を使い分けるっていうか……あの口先のうまい感じ、本当に鼻につくわね」

なぜか、風見紬が渕上純を貶めるのを聞いて、神原文清は胸の奥が酷くざらついた。彼は眉をわずかに寄せた。

「渕上純は自分から揉め事を起こすような人間じゃない。君が手を出さなければ、向こうだって何もしないさ」

一瞬呆気にとられ、風見紬の顔色が変わる。

「今、彼女の肩を持ったの?」

「俺はさっき、君を助けな...

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