第21章 私の母は世界一綺麗な人

橘芹奈(たちばなせりな)は、黒田奏多(くろだかなた)の要求をすげなく跳ね除けた。

こればかりは交渉の余地などない。黒田奏多が自ら足を運んだからといって、橘芹奈が首を縦に振ることは絶対にあり得なかった。

「息子さんにはもう、新しいママがいるんでしょう? 一番良くしてくれる『新しいママ』に助けてもらえばいいじゃない。私みたいな『古いママ』の出番なんてないわよ!」

言い捨てて、橘芹奈はドアを閉めようとした。

黒田奏多は高級革靴の爪先をドアの隙間にねじ込み、強引に閉まるのを阻止した。

「相変わらず幼稚だな」

黒田奏多は、客観的な事実だとでも言うように橘芹奈の振る舞いを評した。

橘芹奈は...

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