第56章

寒い天気で、吐く息は真っ白に凝縮していた。五条孝一の顔は血が滴り落ちそうなほど赤くなっていた。

彼の視線は森田幸人を掠め、私の上で一瞬止まると、顔を横に向けて皆から目を逸らしながら言った。「君はまだ小さいから、変なものが勉強の邪魔になるといけないと思って預かっていただけだ。欲しいなら、帰ったら全部返すよ」

森田幸人はその言葉を聞いた途端、「わぁっ」と爆発した。「てめえ何っと言った?あれは変なものじゃねーよ」

五条孝一も負けじと、冷たい表情で森田幸人と言い合いを始めた。二人の喧嘩はどんどん激しくなり、他の二人の男子が懸命に二人を諭そうとしていた。

私はしかし、聞けば聞くほどおかしいと思...

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