第4章

 雪見ヶ丘は狭い町だ。長く住んでいれば、必ず知った顔に出くわす。

 戻ってきて四日目、私は井上灯里に会った。

 高校の同級生だが、当時はそれほど親しかったわけではない。

 けれど大人には大人の付き合いがある。私たちは居酒屋で向かい合い、湯気の立つすき焼きをつつくことになった。

 最初は互いにぎこちなかった。

 井上灯里は私にお茶を注ぎながら尋ねた。

「東京で成功してるって聞いてたけど、どうして戻ってきたの?」

 私は湯呑みを握り、掌の温もりを感じながら微笑んだ。

「東京は広すぎるのよ。一人だと、どうしても寂しくて」

「篠原くんは? 結婚したんでしょ?」

 私の動きが止まる...

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