第8章

 治療が進むにつれ、私の体調は坂道を転げ落ちるように悪化した。

 一日の大半を痛みが支配し、ベッドから降りることすら叶わなくなった。

 白川絵雅がヘルパーを手配してくれた。

 だが翌日、袖をまくった篠原悠二が洗面器を持ってベッドの脇に立っていた。

「俺がやる」

 彼は頑として譲らなかった。

 私は枕に頭を預け、怒る気力もなく弱々しく手を振った。

「出てって」

「その言葉はもう聞き飽きた。免疫がついたよ」

 彼は引きつった笑顔さえ浮かべてみせた。

 私は抵抗する力もなく、彼が甲斐甲斐しく世話を焼くのを冷ややかに見つめるしかなかった。

「湊、東京へ帰ろう」

 彼はタオルを...

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