番外

八年目から、俺の傍にいる女は竹内葵一人だけとなった。

「藤井さん、結婚式はいつ頃お考えで?」

あるビジネスパーティーの席で、パートナーの高橋が笑いながら尋ねてきた。その視線は、俺の隣に立つ葵へと意味ありげに向けられている。

俺は酒を一口啜り、顔色一つ変えずに答えた。「結婚は人生の一大事ですから、慎重に考えなければなりません」

高橋はははっと大笑いした。「竹内さんはもう八年もあなたの傍にいる。てっきり、お二人の仲はもう結婚秒読みかと思っていましたよ」

あり得ない。

俺はビジネスマンだ。

このような何の役にも立たない結婚相手は、俺にとって全く必要のないものだった。

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