第107章

渡辺翔太は怒った様子で立ち去った。

カウンターには二人だけが残された。

田中炎は佐藤和也をちらりと見遣り、彼がまだ自分の思考に沈んでいるようだったので、急いで話しかけることはしなかった。

しばらくして、佐藤和也は低い声で尋ねた。

「さっきの言葉、どういう意味だ?」

田中炎は口元を緩めた。

「お前の心の中に答えがあるんじゃないのか?」

その言葉に、佐藤和也は顔を上げ、暗い眼差しで彼を見つめた。

「どんな答えだ?」

「和也、覚えているか?前回もここで聞いたはずだ。これだけの年月が過ぎても、まだ自分が何を望んでいるのか分からないのか?」

佐藤...

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