第119章

佐藤和也が電話に出ると、川崎美咲の柔らかな声が受話器の向こうから聞こえてきた。

「和也、仕事終わった? この時間なら空いてるかなと思って、電話してみたの」

「ああ」佐藤和也は少し離れたところに立っている高橋桜に一瞥をくれた。

「今終わったところだ」

「よかった、お仕事の邪魔をしちゃうんじゃないかって心配だったから。おばあちゃんはどう? 実は、この二日間すごく心配で、病院でもちゃんと休めなくて...おばあちゃんが私のこと好きになってくれたらいいのに。そうしたら、私も病院でお見舞いできるのに」

川崎美咲の言葉は一つ一つがおばあちゃんのことばかりで、佐藤和也の心にはまた少し罪悪感が芽生え...

ログインして続きを読む