第15章

「堕胎」という言葉を聞いて、山本双葉は一瞬固まったが、すぐに反応した。

「ど、どうして?」

「どうしてって他に理由があるの?」

「でも...」

電話の向こうで山本双葉は諦めきれない様子で言った。

「二年よ、あなた彼と二年も一緒にいたのに、彼はあなたに対して何の未練もないの?それにこの子だって他人の子じゃないわよ、佐藤和也の子なのよ。夫として、父親として、少しの情けもないの?」

高橋桜は黙り込んだ。

メッセージを送る前までは、佐藤和也に対してまだ幻想を抱いていたとしたら。

今、その幻想はもう確実に死んでしまった。

ネットで流行っている言葉は何だったっけ?

そう...

彼が...

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