第29章

渡辺翔太は即座に頷いた。

「その通りだね。彼があんなに酔っぱらって誰も世話する人がいないのはまずいね。じゃあ、俺たちは……」

「私のところに連れて行こう」田中炎が突然口を挟んだ。彼の声は落ち着いていた。

「さっきも聞いたろう、彼が呼んだのは俺の名前だ。約束を守らなければ、彼が目を覚ましたら俺に文句を言うかもしれない」

田中炎と佐藤和也は長年の古い友人だった。彼が佐藤和也を知っているのは、渡辺翔太や川崎美咲よりもずっと前からだった。

そして彼は性格が落ち着いており、普段の会話でも無駄口をたたかず、ほとんどの場合は黙っているが、一度口を開くと、断りづらかった。

今のように。

川崎美...

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