第35章

高橋桜は無意識に否定した。

「いええ」

そして、すぐに問い返した。

「誰から聞いたの?」

その言葉を聞いて、佐藤和也は細い目を細めた。

「なかったんじゃないのか?なのに誰から聞いたかを気にする?」

「ああ」高橋桜は平然と口を開いた。

「誰がそんな噂を流したのか知りたくて。渡辺翔太?田中炎?そう、田中炎から電話があったわ。あなたが酔っぱらったから来てほしいって。断る暇もなく切られちゃったけど」

佐藤和也は眉をひそめ、彼女の表情一つ変わらない様子を見つめた。

「本当は執事にあなたを迎えに行かせようと思ったの。でも夜中だし、執事は年だから起こすのも悪いし。田中炎と渡辺翔太がいるな...

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