第43章

「な、なに?」

川崎美咲は自分の耳を疑った。

これは、彼女が望んでいたことではなかった。

彼女が望んでいたのは、佐藤和也に手作りのお弁当を持ってきて、中に入ったら怪我した指を見せて、それを知った佐藤和也が感動し、彼女を心配してくれること。

そして、二人きりでオフィスにいて、距離を縮めること。

今のような状況ではなく……

川崎美咲は諦められず、ぎこちない笑みを浮かべて言った。

「和也くん、何の用事があるの?もし時間がそんなに長くないなら、あなたのオフィスで待ってもいいわよ」

「ごめん美咲、結構長くなるから、先に帰っていてくれる?」

「私は……」

秘書はすでに川崎美咲の前に立...

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