第55章

市役所は待っている人数が多くなかったが、後から来た彼らはやはり順番を待たなければならなかった。

高橋桜は昨夜よく眠れず、体がとても疲れていたので、座る場所を見つけて腰を下ろした。

佐藤和也もついて来たが、依然として表情は暗く沈んだままで、高橋桜の隣には座らなかった。

市役所に入ったことで、高橋桜の気持ちはまだ落ち着いていた。

彼女は顔を上げて佐藤和也を一瞥し、尋ねた。

「座らないの?」

「いい」

佐藤和也の声は温もりの欠片もない冷たさで、彼女を見ようともしなかった。

高橋桜は理解した。彼は彼女と関わりたくないのだ。

そうだろう、もう離婚するのだから、彼はすぐに川崎美咲と連理...

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