第61章

病室を出た後、佐藤和也は彼女を連れて歩き始めたが、高橋桜はかなり力を入れて彼の手を振りほどいた。

「何をする?」

佐藤和也は厳しい眼差しで彼女を見つめた。

「今日はまず帰ろう」

高橋桜は美しい眉を寄せた。

「さっきのおばあちゃんの様子、見なかったの?おばあちゃんは療養院を出たいのよ。ここにいたくないんだよ」

さっきのやり取りから、高橋桜は察していた。佐藤おばあさんはきっと、家に戻れば家族に迷惑をかけると心配して、療養院に留まるしかないと思っているのだろう。

帰りたいのに、帰る勇気がない。

高橋桜はとても落ち込んだ。毎週末おばあちゃんを訪ねているのに、彼女のそんな気持ちに気づけ...

ログインして続きを読む