第72章

高橋桜は小さな口をパクパクと動かし、止まることなくしゃべり続けた。彼女の口から発せられる一言一言に、佐藤和也は自分が反論できないことに気づいた。

彼は高橋桜のその口の力を知っていた。

最初に彼女を仕事の交渉に連れて行った時、そういったレベルの仕事に触れたことがなく、さらに若い年齢だったため、どうしても緊張の色が見えた。

しかし回数を重ねるごとに、彼女はますます手慣れていき、口を開けば場を支配し、論理的思考も十分に明晰だった。

毎回、相手を論破するのに十分な言葉を持っていた。

そして今、彼女はその方法で自分に対応していた。

佐藤和也は自分が何も言えなくなっていることに気づいた。

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