第75章

考えに耽っていると、店主の声が彼女の思考を中断した。

「お嬢さん、こちらがサンドイッチとクリームパンです」

声に気づき、高橋桜は我に返った。店主が既に彼女の品物を包装し終えているのを見て、手を伸ばして受け取った。

「ありがとうございます」

「またご来店をお待ちしております」

高橋桜は袋を手に持って身を翻した。

この道のりずっと、彼女は誰かに見られている気がしていた。会社の門をくぐるまで、その視線は消えなかった。

さっきの黒い車の中に本当に誰かいたのだろうか?

実は戻る途中、近づいて確かめてみようという考えが浮かんだ。人がいようがいまいが、見に行けばすぐにわかるはずだ。

でも...

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