第78章

高橋桜は彼女が意外と機転が利くことに驚いた。外に出るなり佐藤和也に電話をかけたのだ。

普段なら、木村優子の賢さを褒めていただろう。

だが最近、彼女と佐藤和也は冷戦状態にあり、今となっては褒める気にもなれなかった。

それに佐藤和也の性格からすれば、今夜の出来事を知ったら、またきっと彼女を叱りつけるに違いない。

兄のような厳しさを思い浮かべると、高橋桜は胸が無限に煩わしくなった。

普通、男性は好きな女性に対して甘やかし、優しく話しかけるものだ。相手を怯えさせないように気を遣うのに、佐藤和也はいつも彼女に厳しく、まるで兄のようだった。

それも高橋桜が、彼は自分に好意を持っていないと感じ...

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