第82章

声が突然携帯から流れ出した時、高橋桜がそれを切ろうとしても、もう遅かった。

彼女が携帯に手を伸ばした時には、すでに音声メッセージは自動的に再生を終えていた。

どうなってるの?彼女は双葉が忙しいことを済ませて戻ってきたら、例のクソ社長のことをまた文句を言うつもりだろうと思っていたのに、まさか自分のことについて話すとは。

そう思った瞬間、高橋桜は表情を変え、立ち上がってドアを開けた。

ドアの外は空っぽで、人影ひとつ見えなかった。

彼女はほっと息をついた。

木村優子に出て行くついでにドアを閉めるよう言ったのだから、彼女はそのまま立ち止まらずに行ったはずだ。さっきの音声メッセージも聞...

ログインして続きを読む