第9章

この質問で家政婦は顔色を失った。

「ご主人様、検査結果はもう処分してしまいました」

佐藤和也の眉がひそんだ。

「何だって?」

家政婦は彼の放つ陰鬱なオーラに怯え、泣きそうになりながら慌てて説明した。

「申し訳ありません、わざとではないんです。あの検査結果はもうボロボロになっていて、その時は特に考えずに…」

ご主人が捨てたものに詮索する気など彼女にはなかった。

それに佐藤和也の会社の機密書類はよく細断されていたし、彼女はただ安穏と暮らすために働いている身。その日も特に気にしなかった。

この二、三日薬を煎じ始めたときも、奥様が病気だと思っていたのに、解熱剤だったなんて。

彼女の...

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