第2章

記憶が津波のように押し寄せてきた。

ベッドに横たわり、天井を見つめていた。だが、まるで天井を突き抜けて、十年前に囚われていたあの白い地獄が見えるような気がした。

十六歳の私。精神科病棟の隅でうずくまり、手首にはまだ包帯が巻かれていた。

「生まれついての怪物だ。決して変わらん」医者の声は氷のように冷たく、彼が私を見る目には、嫌悪と恐怖しか宿っていなかった。

「あの子は私の妹です。愛で癒せます」マディソンの声が戸口から聞こえた。彼女は手作りのチョコレートチップクッキーがいっぱい入った小さなバスケットを抱えていた――その甘い香りが、殺風景な病室に一瞬で広がった。

でも、彼女の手が微かに震えているのが分かった。目の下には痣があり、厚いコンシーラーで雑に隠されていた。

私に会いに来るためだけに、また父さんと喧嘩したんだ。

「ミス・ブラック、最後の警告です」と医者は吐き捨てた。「この患者との接触を維持することは、あなたを危険に晒すだけだ。軍隊からはっきり通達が出ています――これ以上続けるなら、深刻な結果に直面することになる、と」

マディソンの肩がこわばるのが見えたが、それでも彼女は私の方へ歩み寄ってきた。

「怪物になんて、なりたくない……」私の声は、傷ついた獣のようにかすれていた。

マディソンは膝をつくと、私を腕の中に引き寄せた。その腕の中だけが、私の世界で唯一の安全な場所だった。「忘れないで、アリ。あなたの笑顔が最高の武器。優しさが最強の鎧よ」

『でも、今なら分かる。優しさなんて、早く死ぬだけだ』

彼女が私には見えていないと思っていた、全てのことを思い出した――面会のたびに「話がある」と役員室に呼び出されていたこと。友人たちが「危険人物の家族と付き合うのは安全じゃない」という理由で一人、また一人と去っていったこと。応募したインターンシップがことごとく不可解な理由で不採用になったこと。誰かが裏で糸を引いていたからだ。

マディソンは、私に向けられるはずだった全世界の憎しみを、一身に受け止めていた。

スマートフォンの画面が光り、手にしていたもう一つの書類を照らし出した――スタンフォード大学の合格通知書。セロハンテープの跡がまだ残っている。マディソンが一度は破り捨て、それからこっそり貼り合わせて保管していたものだ。

その日のことを鮮明に覚えている。入学事務室で、マディソンは三人の人物と対峙していた。入学担当官、父、そして見知らぬ軍服の礼装を着た男。

「正気か? あの化け物のためにスタンフォードを捨てるなど!」父――ブラック将軍が怒鳴った。「君にこの機会を与えるために、私がどれだけ手を尽くしたと思ってるんだ!」

「あの子には私が必要なの。家族は家族を見捨てない」明るいオフィスの中で、マディソンは毅然と立っていた。その声は穏やかでありながら、決して折れることのない強さを秘めていた。

制服の男が立ち上がった。「ミス・ブラック、我々はもう十分に寛容に接してきた。もしあなたがアリソンとの接触を続けると言い張るのなら、あなたの未来は……著しく制限されることになるでしょう」

「構いません」マディソンの声は静かだったが、その一言一句がハンマーのように重く響いた。

私はドアの陰に隠れ、自分の心が砕け散る音を聞いていた。

さらに手紙をめくった――大学時代に彼女が書いたものの、決して送られることのなかった手紙だ。

『アリへ。今日、クラスメイトにどうして心理学を勉強しているのかと聞かれたの。助けを必要としている人たちの力になりたいからって答えたら、なんて世間知らずなんだって笑われた。あなたを助けるためだけにこれをやっていると知ったら、もっと笑うんだろうな』

『今日、教授がPTSDについて講義した。あの病棟にいたあなたのことを思い出したら、胸が張り裂けそうに痛んで、息もできなかった』

『また父さんが大学に現れた。見込みのないものに時間を無駄にするなって警告されたわ。学費を打ち切るとまで脅してきた。でも、レストランでウェイトレスの仕事を見つけたの。すごく疲れるけど、これで父さんの助けがなくてもあなたの面倒を見られる』

その一言一言が、胸の中で刃物がねじ込まれるような感覚だった。

次の手紙を開ける手が震えた――三ヶ月前にマディソンが書いたものだ。筆跡は乱れ、一行一行から恐怖が滲み出ていた。

『あいつら、私の赤ちゃんを研究に使いたいって。そんなことをされるくらいなら、死んだ方がまし』

『アリ、あいつらが今、私を四六時中監視している。グラントも様子がおかしいの――あなたのことばかり訊いてくる。いつ帰ってくるのかって。怖くてたまらない』

『今日、またあいつらが来た。協力しなければ、あなたをまた施設に送ると言った。少しだけ情報を渡したけど、赤ちゃんのことじゃない。赤ちゃんのことだけは絶対に』

『昨日、ケイトリンが訪ねてきた。もっとクリーンな解決策があるって。彼女の目は、十年前のあの軍医とそっくりだった。彼女が何を企んでいるのか、私には分かる』

『アリ、あなたが帰ってきた時、私はもうここにいないかもしれない。でも、復讐はしないで。ただ、普通に生きて』

『私が成し遂げた一番の偉業は、あなたに愛を教えたこと。二度と憎しみに吞まれないで』

最後の手紙の筆跡は、ほとんど判読不能だった――紛れもなく、極度の恐怖の中で書かれたものだ。

『今夜、あいつらが来る。グラントとケイトリンが電話で話しているのを聞いてしまった。「事故」の準備はすべて整った、と。逃げたいけど、監視が厳しすぎる。アリ、唯一の心残りは、あなたにもう一度会えなかったこと。もし来世があるなら、またあなたの姉でありたい』

涙で視界が滲んだ。

「ごめんね、姉さん。今回は無理だ」私は手紙にそう囁いた。

マディソンの最期の日々を思い浮かべた――妊娠八ヶ月で、脅迫に囲まれ、私が帰ってきたらまた閉じ込められるのではないかと毎晩眠れずに過ごし、私が白い地獄に戻される悪夢にうなされて目を覚ます。

そして彼女は、私を守るために死を選んだ。

夜明けと共に、私は父の書斎に飛び込んだ。ブラック将軍は糊のきいた礼装に身を包んで座っており、壁に飾られた勲章が朝の光を浴びていた――まるで私の無垢を嘲笑うかのように。

「彼女が殺されたことくらい、分かってるでしょ!」と私は叫んだ。

彼は一瞥もくれず、ただ机の上の書類を整理し続けた。「一個人の命が、国家の安全を脅かすことは許されない」

「あなたの娘だったのよ!」私は拳を叩きつけ、書類をあたり一面に散乱させた。

ブラック将軍はようやく顔を上げた。「あの子は感傷的な理想主義者だった。これで良かったのかもしれん。さあ、選べ。口を閉ざして生きるか、それとも病棟に戻るか」

「彼女が私のために何を犠牲にしたか、少しでも分かってるの?」私の声は怒りで震えた。「スタンフォードを諦めた。夢を捨てた。友達をみんな失った。そして怯えながら死んでいった――全部、私を守るために!」

「それは彼女の選択だ」父の声はコンクリートのように平坦だった。「愚かな選択だ」

その瞬間、私は本当の絶望がどんなものかをようやく理解した。

背を向けて歩き出した。一歩一歩が、割れたガラスの上を歩いているような感覚だった。

オーロラ・ベイの街中、視線が私を追っているのを感じた――潜入捜査官、「心配する」地元住民、そして角にいるホームレスの男まで。

彼らは私を見て、何を思っているのだろう? 実験用のネズミか? 歩く時限爆弾か?

私はわざと入り組んだ道を選び、監視網が町全体を覆っていることを確認した。ここは私の記憶にある故郷ではなかった――巨大な一つの檻だ。

だが、檻は怪物を閉じ込めてはおけない。

ついに、私はオーロラ・コーヒーに足を踏み入れた――マディソンの行きつけだった店だ。オーナーのマーサは私を見ると、目に複雑な感情をちらつかせた。

「お姉さん、亡くなる前にここに来たのよ」彼女はコーヒーマグを磨くふりをしながら、静かに言った。「あなたが戻ってきたらこれを渡すようにって。葉っぱみたいに震えてたわ。もし自分の身に何かあったら、絶対にこれをあなたに渡さなきゃいけないって」

小さなメモが私の手のひらに滑り込まされた。見慣れたマディソンの筆跡。

『地下室 レベルB3。コードはアリの誕生日』

私はそのメモを、重みを感じながら握りしめた。

「姉さん、最初からこうなることが分かっていたんだね……」そう思った。涙はもう消え、氷のように冷たい決意に変わっていた。

十年前、あなたは私に愛を教えた。

今度は、私が憎しみを使って、あなたのための正義を勝ち取らせて。

カフェを出ると、雪が降り始めていた――その一粒一粒が、天からのメッセージのように感じられた。

監視者たちはまだ私を尾行していた。だが、彼らは気づいていない。狩る者と狩られる者の立場が、間もなく入れ替わることに。

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