第3章

午前2時。研究所の地下、保管室B3。

キーパッドのコードを打ち込む手が震えていた。私の誕生日――地獄そのものへの組み合わせのように思える八桁の数字。

「ピーッ――」

重い鋼鉄の扉がうなりを上げて開き、極地の空気が私に叩きつけられた。保管ポッドの列が暗闇の奥へと伸び、吐く息が空中で凍りつくほどに部屋は冷え切っていた。

私はその凍てついた死体安置所へと足を踏み入れた。

通路を進み、ポッド7を探す。

「六……七……あった」

私の声が金属の壁に反響した。

ポッドの霜が降りた窓越しに、彼女が見えた。マディソン――その笑顔で部屋中を明るくした、私の姉。

今は……。

息が止まった。

マディソンは死人のように青白く横たわり、目は固く閉じられていた――だが、私を打ちのめしたのはそこではなかった。腹を横切る、肉屋がやったような無惨な切開痕。まるでふざけた科学実験のように、乱雑に縫合されていた。

「嘘……こんなのって……」

私は慌てて制御パネルを操作し、ポッドをこじ開けた。

冷気が骨の髄まで突き刺さる。マディソンの肌はまるで大理石のようだったが、私の血管の中では酸のような怒りが燃え盛っていた。

その時、ポッドの内壁が目に入り――血の気が引いた。

血痕。至る所に。

金属に塗りつけられた手形。必死に掻きむしった爪の深い傷跡。彼女の爪は剥がれ、血まみれの跡を残していた。

「なんてことを……どんなひどいことをされたの?」

声はひび割れていたが、涙は出なかった――ただ、白熱した憤怒だけがあった。

ポッドの横に医療カルテが掛かっていた。そこに書かれた言葉に、胃がひっくり返りそうになった。

『被験体07――プレミアム遺伝子サンプル――胎児摘出完了――母体の死亡を確認』

『生きたまま解剖? 麻酔もクソもなしか?』拳を固く握りしめる。「この外道どもが!」

下にはさらに詳細が記されていた。

『被験体は処置中に激しい抵抗を示し、手術時間が延長。今後の被験体には強化型拘束具の使用を推奨』

『被験体07は驚異的な生存本能を発揮。切開後47分間、心拍活動が継続』

『胎児組織は損傷なし。特殊培養ユニットへ移送済み』

47分間。

正気を失いかけた。奴らは彼女が意識のあるうちに切り開き、死ぬまでの47分間、苦しませ続けたのだ。

そして彼女の赤ちゃん――私の甥は――今や奴らの実験用マウスだ。

「お前ら全員、一人残らず叩き潰してやる」私は彼女の動かない体に、ほとんど人間とは思えない声で囁いた。

午前4時。廃墟と化した研究小屋。

灯油ランプに火を灯すと、腐りかけたテーブルの上で影が踊った。盗み出した職員ファイルが広げられ、いくつかの名が赤インクで丸く囲まれている。

トンプソン保安官。グラント。ケイトリン。ウィリアムズ大佐……。

「相場はいくらだったんだ、トンプソン? 姉の命をいくらで売り渡した?」

マディソンの写真に語りかける――彼女の明るい笑顔が、この悪夢のような世界をあざ笑っているかのようだった。

だが、優しさはここでは死刑宣告に等しい。私はそれを、痛いほど思い知らされていた。

夕方までに、私は凍った湖の古い桟橋で待っていた。

計画にはうってつけの場所だ。トンプソンは血塗られた金を持って現れ、それで逃げ切れると思っているだろう。だが奴は、本当の痛みがどんなものかを知ることになる。

氷の上をザクザクと踏みしめる足音がした。

トンプソンの巨体が波止場に現れ、黒いケースを握りしめている。あの強欲なクソ野郎、本当に金で私を黙らせられると思ったらしい。

「アリソンか? テキストを送ってきたのはあんたか?」彼はぜいぜいと息を切らした。「五万ドルだ。ここにある。永遠に姿を消すには十分な額だ。これを受け取って、とっととこの町から消えろ」

私は影から歩み出て、鮫のような笑みを浮かべた。「私の姉の命が、五万ドル?」

「十分すぎる額だ! あれは事故だったんだ! いつまでも俺たちを脅せると思うな!」トンプソンは虚勢を張ってはいたが、声は震えていた。

「事故?」私は湖のように冷たい声で笑った。「47分間の生体手術が、事故だって?」

トンプソンの顔が雪のように真っ青になった。「一体どうしてそれを――」

私はナイフを抜き、飛びかかった。

バン!

一発の銃声が夜を切り裂いた。

弾丸が耳元をヒュッと掠める。私は即座に警戒し、体を翻した。

波止場の向こうの端から、ケイトリンが現れた。武装した兵士四人を引き連れて。金髪のクソ女は、胸糞の悪くなるような笑みを浮かべていた。

「あの子の命に価値はなかった。でも、あなたは違う。金塊と同じくらいの価値があるわ」

すぐに理解した。「私がここに来るってわかってたのね」

「当然よ」ケイトリンはピストルを上げた。「まさか、このデブを一人で死なせに来させるとでも思った? こいつはただの餌よ」

トンプソンは激昂してケイトリンに振り向いた。「安全だって言ったじゃないか!」

「黙れ、この豚」ケイトリンは嫌悪感を隠そうともしなかった。「あなたの役目はもう終わりよ」

兵士たちが包囲を狭めてくる。

だが、私は笑い出した。

恐怖からじゃない――純粋で、歪んだ喜悦からだ。

精神科病棟での十年が、私に一つのことを教えてくれた。追い詰められた時、狂気こそが最強の武器になる、と。

「私を囲んだくらいで、勝ったつもり?」

スモークグレネードを投げつけた。白い煙が爆ぜる中、一番近くの兵士に飛びかかる。

あたりは一瞬にして地獄絵図と化した。

奴らの予想を上回る速さで私は動いた。私の刃が最初の兵士の喉を切り裂き、熱い血が顔を染めた。そのライフルを奪い取る。

バン! バン! バン!

湖中に銃声が轟き、マズルフラッシュが氷を照らし出す。

私は転がり、弾丸を避けながら引き金を絞った。二人目の兵士が倒れる。

鼻腔を満たす鉄臭い血の匂いが、十年前のあの血まみれの午後の記憶を呼び覚ます。

だが、その代償を払わされた――一発の弾丸が左肩を貫いた。稲妻のような痛みが全身を駆け巡った。

「クソッ……雑だな」

歯を食いしばり、激痛に耐える。腕を伝う血が、雪を深紅に染めていく。

「生け捕りにしろ! 死なせたら使い物にならん!」ケイトリンが部下に叫んだ。

奴らはゴム弾に切り替えたが、私はすでに湖に向かって疾走していた。

流れ弾の一発がトンプソンの腕に命中した。血を流しながら、彼はケイトリンに絶叫する。「殺さないと約束したじゃないか!」

ケイトリンは冷たく彼を見つめ、銃を構えた。「死人に口なしよ」

「隊長!」彼女の部下の一人が制止した。「彼は保安官です! 彼が死ねば面倒なことになります!」

ケイトリンはためらった――ほんの一瞬だけ。だが、その一瞬があれば十分だった。

息を吸い込み、凍てつく湖に飛び込んだ。

水がスレッジハンマーのように体を打ち付けた。

暗い水の底を泳ぐ。肺は張り裂けそうで、肩は氷水の中でズキズキと痛んだ。だが、進み続けなければならなかった――もっと深く、もっと遠くへ。

ようやく水面に顔を出した時、私は湖の中央にある小さな島の近くにいた。波止場の明かりは、遠くに点滅する光点にしか見えない。

数時間後、サイレンの音が町の静寂を打ち破った。

「緊急警報! アリソン・ブラック、26歳、女性。重度の反社会性パーソナリティ障害と診断。極めて危険! 本日夜、トンプソン保安官および軍隊関係者を襲撃し、現在も逃走中。目撃した場合は直ちに法執行機関に通報してください。逮捕に繋がる情報には10万ドルの懸賞金が支払われます!」

全ての家の窓に明かりが灯った。怯えた顔が窓に押し付けられている。

「十万ドルか……俺の五年分の給料より多いぞ」

「保安官を殺そうとしたんだ――次は誰だ?」

「鍵を全部閉めろ! あのサイコを家に入れるな!」

町全体が、私の牢獄と化した。

打ち捨てられた雨水排水路の奥深くで、私は隅にうずくまり、引き裂いた布で肩の傷を縛っていた。頭上からは足音と犬の吠え声が響いてくる――捜索隊が一インチたりとも見逃すまいと嗅ぎ回っているのだ。

間に合わせの包帯は、すぐに血でびっしょりになった。顔は土気色になっていく。

首にかけた十字架のネックレスに触れる――マディソンがくれた最後の贈り物だ。

「ヘマしちゃったよ、お姉ちゃん……でも、まだ終わりじゃない」

足音はだんだん大きくなってきた。捜索灯の光が排水路の入り口を薙ぐ。

私は震える息を吸い込み、闇のさらに奥深くへと這っていった。

最初の復讐は失敗に終わった。だが、それは一つのことを証明した。

この世界では、天使の復讐を果たせるのは、誰よりも非情な悪魔だけなのだと。

そして私は、その悪魔になる覚悟を決めた。

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