第5章

会ったことはないですけど、と近藤美咲は言った。

「どうしてですか」

「どうしてそんなに早く、春菜のやり方を全部覚えられたのか気になっただけよ。あのフルーツティーのレシピも、テーブルのセッティングも、それにあの子の接客スタイルまで、そっくりそのまま」

近藤美咲の浮かべていた笑みが、わずかに揺らぐ。

「物覚えがいいだけですよ、私」

「春菜があのレシピを完成させるのに、どれだけ時間をかけたと思ってるの。あのワイングラスだって、あの子が自腹で買ったものよ。十八番テーブルのセッティングは……律とのデートのために、あの子が特別に考えたものだったのに」

やっと、誰かが本当のことを口にし...

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