第7章

植川大輔は、完璧なタイミングを見計らっていた。中島律は休憩室で一人、事務作業に追われている。近藤美咲は受付で新人の指導中。そして清水友里はバーカウンターに立ち、すべてを聞ける位置にいながらも、騒ぎの中心から絶妙に距離を保っている。

コン、コン、と植川大輔が休憩室のドアをノックする。

「中島さん、ちょっといいですか。話があるんですけど」

「どうした」

植川大輔は部屋に入ると背後でドアを閉め、持っていた箱を中島律のデスクに置いた。

「春菜のロッカーを片付けてたら、これが出てきたんです。中島さんには、見せておくべきだと思って」

その時が来た。植川大輔は、お腹の赤ちゃんのことを律...

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