第9章

近藤美咲が悲鳴を上げて飛びのいた。中島律は顔面蒼白になり、椅子から転げ落ちそうになる。

植川大輔、清水友里、小林沙織が駆け寄ってきた。彼らに、私の姿は見えない。だが、近藤美咲の剥き出しの恐怖と、中島律の凍りついた衝撃は、見て取れたはずだ。

「春菜……?」

中島律が囁く。

やっとだ。この一週間、見えなくて、聞こえなくて、無視されて、取って代わられて……でも、私は、今、ここにいる。本物として。もう誰も否定できない存在として。

「こんにちは、律。それから、近藤美咲さん」

私の声は、穏やかで、氷のように冷たかった。

「素敵なディナーの最中だったかしら」

「あなたは……死んだ...

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