第101章

目下、他に手立てはない。

「森野社長、場所を教えていただけますか。ここまで来て、応じないわけにはいきませんから」

森野昇の目の奥に、笑みがよぎった。彼は岩崎奈緒のこういうところが好きだった。

時勢を読む、ということだ。

三浦安が彼女に一杯食わされ、藤原光司とは微妙な関係にあると聞く。このような女を征服してこそ面白いというものだ。

「ペニー、車を寄越して迎えに行かせるよ」

蘭亭ビル。

岩崎奈緒が車を降りると、白いスーツに身を包んだ森野昇が大きな薔薇の花束を抱えて外に立っていた。いかにも気前が良く裕福そうな佇まいだ。

彼女が立ち止まるや否や、森野昇が花束を抱えて歩み寄ってきた。

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